建設業許可の営業所技術者等とは?資格・実務経験の要件を行政書士が解説

建設業許可を取得するための重要な要件の一つが、 「営業所技術者等」の配置です。

建設業許可を検討している方からも、 「資格を持っていないと営業所技術者等になれないのか」 「実務経験10年でも大丈夫なのか」 「代表取締役本人が営業所技術者等を兼ねられるのか」 といったご相談があります。

結論からいうと、営業所技術者等になる方法は国家資格だけではありません。
一般建設業では、許可業種に対応する国家資格のほか、 指定学科卒業後の一定期間の実務経験や、 原則10年以上の実務経験などによって要件を満たせる場合があります。

ただし、建設業許可は29業種に分かれているため、 どの資格や実務経験でもよいわけではありません。

この記事では、建設業許可における営業所技術者等とは何か、 一般建設業で必要となる資格・実務経験、 営業所ごとの配置や証明方法について解説します。

建設業許可の「営業所技術者等」とは?

建設業許可を受けて営業するためには、 許可を受けて建設業を営もうとする すべての営業所ごとに、 一定の資格・経験を有する営業所技術者等を置く必要があります。

営業所技術者等は、 建設工事についての専門的な知識・経験を有し、 営業所において請負契約の締結や工事施工に関して 技術的な役割を担う重要な存在です。

営業所があればよいのではなく、 その営業所で扱う許可業種に対応できる営業所技術者等が必要です。

以前の「専任技術者」と何が違う?

以前は、この要件について 「専任技術者」という名称が使用されていました。

建設業法令の改正により、 現在は「営業所技術者等」という名称が使用されています。

そのため、過去の記事や書類などでは 「専任技術者」という表現が残っている場合があります。

「専任技術者」という旧名称を見かけても、 現在の建設業許可でいう営業所技術者等に関する説明である場合があります。

営業所技術者等はすべての営業所に必要

営業所技術者等は、 建設業を営む営業所ごとに配置する必要があります。

例えば、 札幌市に本店だけを設けて建設業を営むのであれば、 その本店について営業所技術者等を配置します。

一方、本店とは別に 建設業法上の営業所を設ける場合には、 それぞれの営業所について要件を確認します。

建設業許可における営業所自体の要件については、 建設業許可の営業所要件とは?自宅・賃貸で申請する場合の条件を行政書士が解説 をご覧ください。

一般建設業の営業所技術者等になる主な方法

一般建設業の場合、 営業所技術者等になる代表的な方法は次のとおりです。

方法 主な要件
国家資格等 許可業種に対応する施工管理技士、建築士、技能士など、 法令で定められた資格等を有する
指定学科+実務経験 許可業種に対応する指定学科を卒業し、 学歴に応じて原則3年以上または5年以上の実務経験を有する
10年以上の実務経験 許可を受けようとする建設業に係る建設工事について、 10年以上の実務経験を有する
国土交通大臣の認定等 法令上、一定の知識・技術・技能を有するものとして 認められるケース
資格を持っていないからといって、 直ちに建設業許可を取得できないわけではありません。
学歴やこれまでの工事経験から 営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。

国家資格を持っている場合

取得したい建設業許可の業種に対応する 国家資格等を持っている場合、 その資格によって営業所技術者等の要件を 満たせることがあります。

代表的な資格としては、 施工管理技士、建築士、技能士などがあります。

ただし、 どの資格でどの業種の営業所技術者等になれるかは決まっています。

例えば、 ある資格を持っているからといって 29業種すべての営業所技術者等になれるわけではありません。

まず「取得したい許可業種」を決め、 その業種に現在保有している資格が対応しているか確認します。

資格なしでも営業所技術者等になれる?

一般建設業では、 国家資格を持っていなくても 営業所技術者等になれる場合があります。

代表的なのが、 許可を受けようとする建設業について10年以上の実務経験を有する場合 です。

また、対象となる指定学科を卒業している場合には、 必要な実務経験年数が短くなることがあります。

資格なしで建設業許可を取得する方法については、 資格なしでも建設業許可は取れる?実務経験10年など取得方法を行政書士が解説 で詳しく解説しています。

実務経験10年で営業所技術者等になる場合

国家資格や指定学科の学歴を使用しない場合、 一般建設業では、 許可を受けようとする建設業について 10年以上の実務経験によって 営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。

ただし、 「建設会社に10年間勤務していた」 というだけでは足りません。

許可を取得したい業種に該当する工事について 実際に技術上の経験を有していたことが必要です。

勤務年数10年=実務経験10年ではありません。
申請する業種について、 どのような工事を経験していたのかを確認する必要があります。

実務経験10年の具体的な証明方法については、 建設業許可の実務経験10年を証明するには?必要書類・証明方法を行政書士が解説 をご覧ください。

指定学科卒業なら実務経験を短縮できる場合がある

許可業種に対応する指定学科を卒業している場合には、 10年間の実務経験ではなく、 より短い期間で要件を満たせる場合があります。

学歴等 実務経験の代表的な基準
大学・高等専門学校等の指定学科 卒業後3年以上の実務経験
高等学校等の指定学科 卒業後5年以上の実務経験
その他一定の指定学科修了者 修了した学校・課程等に応じて必要な実務経験を確認

例えば、 土木工学、建築学、電気工学、機械工学など、 許可業種によって対応する指定学科が定められています。

「大学を卒業しているから3年」という意味ではありません。
取得したい許可業種に対応する指定学科であることを確認する必要があります。

実務経験は取得する業種ごとに確認する

建設業許可は29業種に分かれているため、 実務経験も原則として 取得したい建設業種との対応関係を確認します。

例えば、 管工事業について実務経験で申請するのであれば、 管工事に該当する工事の経験を確認します。

内装仕上工事を長年経験していたとしても、 それだけで当然に管工事業の実務経験として 認められるわけではありません。

「建設業を10年」ではなく、 「何業の工事を何年経験したのか」を整理することが重要です。

一人の営業所技術者等で複数業種を担当できる?

一人の方が、 複数の許可業種について必要な資格・経験を満たしている場合には、 同一営業所において複数業種の営業所技術者等となれる場合があります。

例えば、 保有する国家資格によって複数の建設業種に対応できる場合や、 複数業種について必要な実務経験を有している場合などです。

そのため、 複数の業種で建設業許可を取得したい場合には、 現在いる資格者がどの業種まで対応できるのかを 最初に確認することが重要です。

営業所技術者等は「専任」である必要がある

営業所技術者等は、 原則としてその営業所において 専任で職務に従事することが求められます。

そのため、 単に資格者の名前を借りて申請することはできません。

実際にその事業者に所属し、 営業所において継続して職務に従事できる状態にあるかを確認します。

「資格だけ持っている知人に名前を借りる」という申請はできません。
資格・経験だけでなく、勤務実態や専任性も重要です。

別会社の社員を営業所技術者等にできる?

営業所技術者等には、 その営業所における専任性が求められます。

そのため、 他社で常勤勤務している方を そのまま自社の営業所技術者等として配置することは、 通常、専任性の観点から問題となります。

現在の勤務状況、 社会保険等の加入状況、 勤務場所などを確認したうえで判断する必要があります。

代表取締役が営業所技術者等を兼ねてもいい?

一定の条件を満たせば、 代表取締役等が営業所技術者等を兼ねられる場合があります。

建設業許可では、 経営体制に関する「常勤役員等」と 技術者に関する「営業所技術者等」は それぞれ別の要件です。

しかし、一人の方がそれぞれの要件を満たし、 勤務場所や常勤性等にも問題がなければ、 両方を兼ねることができる場合があります。

特に一人親方や小規模法人では、 代表者本人が経営経験を有し、 さらに対象業種の資格や実務経験を持っているケースがあります。

常勤役員等について詳しくは、 建設業許可の常勤役員等とは?必要な経験・要件と証明方法を行政書士が解説 をご覧ください。

一人親方本人が営業所技術者等になれる?

一人親方・個人事業主本人が、 取得したい業種に対応する資格または実務経験の要件を満たしていれば、 本人が営業所技術者等となれる場合があります。

例えば、 個人事業主本人が国家資格を持っているケースや、 対象業種について10年以上の実務経験を証明できるケースなどです。

一人親方の建設業許可については、 一人親方でも建設業許可は取れる?札幌の行政書士が取得要件を解説 で詳しく解説しています。

営業所技術者等の資格は何で証明する?

国家資格等を使って営業所技術者等の要件を満たす場合には、 その資格を確認できる資料を提出・提示するなどして確認します。

例えば、 資格者証、合格証明書など、 使用する資格に応じた確認資料を準備します。

具体的な必要資料については、 資格の種類や申請内容に応じて確認します。

実務経験は何で証明する?

実務経験を使って営業所技術者等の要件を満たす場合には、 経験した期間だけではなく、 対象業種の工事を行っていたことを 客観的な資料で確認することが重要です。

状況に応じて、例えば次のような資料を確認します。

  • 実務経験証明書
  • 過去の建設業許可関係書類
  • 工事請負契約書
  • 注文書・注文請書
  • 請求書
  • 工事内容が分かる資料
  • 在籍期間等を確認する資料
  • その他、経験内容を裏付ける資料
実務経験で申請する場合は、 「経験年数」だけでなく「工事内容」と「証明資料」の3つをセットで確認します。

昔の勤務先での実務経験も使える?

現在の勤務先だけで必要な実務経験年数がなくても、 以前勤務していた会社での経験を使用できる場合があります。

例えば、 過去の建設会社で5年、 現在の会社で5年というように、 複数の勤務先での経験を組み合わせて 必要な期間を確認するケースもあります。

ただし、 それぞれの期間について 対象業種の実務経験であることを 必要な資料で証明できることが重要です。

特定建設業では要件がより厳しくなる

営業所技術者等の要件は、 一般建設業と特定建設業で異なります。

特定建設業では、 一般建設業よりも厳しい技術者要件が設けられており、 許可業種によって資格・経験等を個別に確認する必要があります。

また、一定の指定建設業については、 営業所技術者等となるために 一定の国家資格者等であることが求められます。

この記事で説明している「10年以上の実務経験」などは、 主に一般建設業の営業所技術者等についての考え方です。
特定建設業を申請する場合は、 別途その業種に対応する要件を確認する必要があります。

営業所技術者等が退職したらどうなる?

営業所技術者等は、 建設業許可を維持するための重要な要件です。

そのため、 営業所技術者等となっている方が退職する場合には、 後任者が要件を満たすかなどを早めに確認する必要があります。

要件を満たす営業所技術者等を配置できない状態となれば、 許可の維持に影響する可能性があります。

資格者が退職すると分かった段階で、 後任候補者の資格・実務経験を確認しておくことが重要です。

営業所技術者等と現場の主任技術者・監理技術者は違う

「営業所技術者等」と 工事現場に配置される「主任技術者」「監理技術者」は、 建設業法上それぞれ異なる役割があります。

営業所技術者等は、 営業所において請負契約の締結等を 技術面から支えるための技術者です。

一方、 主任技術者・監理技術者は、 建設工事の現場において施工の技術上の管理を担います。

「営業所に必要な技術者」と「工事現場に配置する技術者」は同じ制度ではありません。

営業所技術者等だけでは建設業許可は取れない

営業所技術者等の要件を満たしていても、 それだけで建設業許可を取得できるわけではありません。

建設業許可では、ほかにも主に次の要件を確認します。

  • 適切な経営体制があること
  • 財産的基礎・金銭的信用があること
  • 適切な社会保険等への加入・届出があること
  • 営業所の要件を満たすこと
  • 欠格要件に該当しないことなど

建設業許可の要件全体については、 建設業許可の要件 をご覧ください。

経営体制については、 建設業許可の常勤役員等とは?必要な経験・要件と証明方法を行政書士が解説 で詳しく解説しています。

財産要件については、 建設業許可の500万円とは?自己資本・残高証明・赤字の場合を行政書士が解説 をご覧ください。

札幌で営業所技術者等の要件を確認する場合

札幌市に主たる営業所があり、 北海道内だけに建設業を営む営業所を設ける場合は、 基本的に北海道知事許可を検討します。

営業所技術者等の要件を確認するときは、 まず次の内容を整理すると効率的です。

  • 取得したい建設業許可の業種
  • 一般建設業か特定建設業か
  • 営業所技術者等となる予定の方
  • 現在保有している国家資格
  • 資格の合格証明書等があるか
  • 最終学歴・卒業学科
  • これまで経験してきた具体的な工事
  • 各工事を経験した期間
  • 過去の勤務先
  • 契約書・注文書・請求書等が残っているか
  • 現在の勤務状況
最初から10年分の工事資料を集める必要はありません。
まず資格・学歴を確認し、 それだけで要件を満たせるかを判断したうえで、 必要な場合に実務経験の証明へ進む方が効率的です。

営業所技術者等についてよくある質問

Q. 国家資格がなくても営業所技術者等になれますか?
一般建設業では、許可を受けたい業種について10年以上の実務経験がある場合や、指定学科卒業後に一定期間の実務経験がある場合など、国家資格がなくても要件を満たせることがあります。
Q. 建設会社で10年以上働いていれば大丈夫ですか?
勤務年数だけでは判断できません。許可を取得したい業種に対応する建設工事について必要な実務経験を有し、その内容・期間を証明できるかを確認します。
Q. 代表取締役が営業所技術者等になれますか?
取得する業種について必要な資格・実務経験等を満たし、専任性等にも問題がなければ、代表者本人が営業所技術者等となれる場合があります。
Q. 常勤役員等と営業所技術者等を同じ人が兼ねられますか?
それぞれの要件を満たし、勤務場所・常勤性・専任性等に問題がなければ、同一人物が兼ねられる場合があります。
Q. 複数業種を一人で担当できますか?
複数の許可業種について必要な資格・経験を有していれば、同一営業所で複数業種の営業所技術者等となれる場合があります。
Q. 昔の勤務先での経験も使えますか?
対象業種に関する実務経験に該当し、必要な資料によって証明できれば、過去の勤務先での経験を使用できる場合があります。

まとめ|営業所技術者等は資格・実務経験・専任性の確認が重要

建設業許可では、 建設業を営む営業所ごとに 営業所技術者等を配置する必要があります。

一般建設業の場合、 許可業種に対応する国家資格のほか、 指定学科卒業後の一定期間の実務経験や、 10年以上の実務経験などによって 要件を満たせる場合があります。

一方で、 資格や経験だけではなく、 営業所における専任性も重要です。

また、 建設業許可は29業種に分かれているため、 「どの資格を持っているか」 「どの工事を何年経験しているか」 「どの業種の許可を取得するのか」 をセットで確認する必要があります。

実務経験を使う場合には、 経験年数だけでなく その工事内容を客観的な資料で証明できるかも重要です。

営業所技術者等の要件を確認します

「持っている資格で何業種を申請できるのか」 「資格はないが実務経験が10年以上ある」 「代表者本人を営業所技術者等にできるのか」など、 現在の資格・学歴・工事経験を確認して申請方法を整理します。

札幌市で建設業許可をご検討中の方は、 行政書士トリキ法務事務所へご相談ください。