生前贈与は遺留分の対象になる?10年・1年のルールを行政書士が解説
「相続対策として子どもに生前贈与しておけば、 その財産は遺留分と関係なくなるのでは?」 と考える方もいらっしゃいます。
しかし、生前贈与をしたからといって、 必ず遺留分の対象から外れるわけではありません。
特に重要なのが、 「誰に贈与したのか」と 「相続開始の何年前に贈与したのか」です。 相続人に対する一定の生前贈与は原則10年、 相続人以外への贈与は原則1年が 重要な基準になります。
この記事では、 生前贈与と遺留分の関係について、 10年・1年のルール、 遺留分の割合・計算方法、 遺留分侵害額請求、 生前贈与と遺言を考える際の注意点まで 札幌市の行政書士が解説します。
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目次
- 1 そもそも遺留分とは?
- 2 誰に遺留分がある?
- 3 遺留分の割合はどれくらい?
- 4 生前贈与は遺留分の対象になる?
- 5 相続人への生前贈与は原則10年以内
- 6 相続人以外への生前贈与は原則1年以内
- 7 1年・10年より前の贈与なら絶対に対象外?
- 8 遺留分を計算するときの財産
- 9 具体例|長男へ生前贈与していた場合
- 10 遺留分を侵害すると生前贈与は取り消される?
- 11 遺留分侵害額請求には期限がある
- 12 遺留分侵害額請求は自動的に発生する?
- 13 生前贈与をすれば相続対策になる?
- 14 遺言を作る場合も遺留分に注意
- 15 生前贈与と遺留分でよくある質問
- 16 生前贈与・遺言についてあわせて読みたい記事
- 17 まとめ|生前贈与は遺留分まで考えて行う
- 18 札幌で遺言書の作成をご検討の方へ
そもそも遺留分とは?
遺留分とは、 一定の相続人に法律上保障されている 最低限の取り分です。
被相続人は、 生前贈与や遺言によって 自分の財産を処分できます。
しかし、 特定の人へ財産の大部分を贈与したり、 「全財産を長男に相続させる」 という遺言を残したりすると、 他の一定の相続人が ほとんど財産を取得できなくなることがあります。
そこで民法では、 一定の相続人について 遺留分を認めています。
誰に遺留分がある?
遺留分が認められるのは、 兄弟姉妹以外の相続人です。
具体的には、次のような人です。
- 配偶者
- 子などの直系卑属
- 父母などの直系尊属
例えば、 相続人が兄弟姉妹だけの場合には、 遺言によって第三者へ全財産を遺贈したとしても、 兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることはできません。
遺留分の割合はどれくらい?
遺留分全体の割合は、 誰が相続人になるかによって異なります。
| 相続人 | 遺留分全体の割合 |
|---|---|
| 配偶者のみ | 2分の1 |
| 子のみ | 2分の1 |
| 配偶者と子 | 2分の1 |
| 配偶者と父母など | 2分の1 |
| 父母など直系尊属のみ | 3分の1 |
| 兄弟姉妹のみ | 遺留分なし |
相続人が複数いる場合には、 この遺留分全体の割合に 各相続人の法定相続分を掛けて 個別の遺留分を計算します。
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生前贈与は遺留分の対象になる?
生前贈与された財産も、 一定の場合には 遺留分を算定するための財産に加算されます。
ただし、 すべての生前贈与が 無期限に対象になるわけではありません。
重要なのが、 贈与を受けた人が相続人か、 それ以外の人か という違いです。
相続人への生前贈与は原則10年以内
相続人に対する生前贈与については、 相続開始前10年間に行われた 一定の贈与が、 遺留分を算定するための財産に含まれます。
ただし、 相続人に対する贈与なら 何でも10年間の対象になるわけではありません。
対象となるのは、 婚姻・養子縁組のため、 または生計の資本として受けた贈与 です。
例えば、 次のような贈与が問題になることがあります。
- 住宅購入資金として多額の資金を贈与した
- 独立・開業資金としてまとまった金銭を贈与した
- 婚姻に際して多額の財産を贈与した
- 生活基盤となる不動産を贈与した
贈与の時期だけでなく、 贈与の内容や当事者の認識なども 確認する必要があります。
相続人以外への生前贈与は原則1年以内
相続人ではない第三者に対する贈与については、 原則として 相続開始前1年間 に行われた贈与が 遺留分算定の対象になります。
例えば、 相続人ではない孫、 知人、 内縁の配偶者などへ 財産を贈与しているケースです。
| 贈与を受けた人 | 原則として算入される期間 |
|---|---|
| 相続人 | 相続開始前10年以内の、 婚姻・養子縁組のため又は 生計の資本として受けた贈与 |
| 相続人以外 | 相続開始前1年以内の贈与 |
1年・10年より前の贈与なら絶対に対象外?
必ずしもそうとは限りません。
贈与をした人と 贈与を受けた人の双方が、 その贈与によって 遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合には、 原則的な期間より前の贈与についても 遺留分算定の対象となる可能性があります。
生前贈与を利用して相続対策を考える場合には、 家族構成、財産額、贈与する相手、 贈与時期などを総合的に検討する必要があります。
遺留分を計算するときの財産
遺留分を算定するための財産の価額は、 基本的に次のように考えます。
この財産額を基礎として、 相続人ごとの遺留分を計算します。
具体例|長男へ生前贈与していた場合
分かりやすい例で考えてみます。
父が亡くなり、 相続人が長男と次男の2人だったとします。
父の死亡時の財産が3,000万円あり、 さらに相続開始前10年以内に 長男へ住宅購入資金として 1,000万円を贈与していたとします。
説明を単純化するため、 債務などはないものとします。
3,000万円 + 1,000万円 = 4,000万円
子のみが相続人の場合、 遺留分全体は2分の1です。
長男と次男の法定相続分は それぞれ2分の1なので、 次男の個別的遺留分は、
= 1,000万円
となります。
ただし、 実際の遺留分侵害額は、 本人が相続によって取得した財産や特別受益、 承継する債務なども考慮して計算します。
遺留分を侵害すると生前贈与は取り消される?
ここは非常に重要です。
現在の制度では、 遺留分を侵害したからといって、 原則として贈与された財産そのものを 返還する制度ではありません。
遺留分を侵害された人は、 贈与や遺贈を受けた人に対して、 遺留分侵害額に相当する金銭の支払い を請求できます。
これを 遺留分侵害額請求 といいます。
遺留分侵害額請求には期限がある
遺留分侵害額請求には、 期間制限があります。
遺留分権利者が、
- 相続が開始したこと
- 遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと
を知った時から 1年間 行使しない場合、 遺留分侵害額請求権は 時効によって消滅します。
また、 これらを知らなかった場合でも、 相続開始から10年 を経過すると請求できなくなります。
一つは相続人への一定の生前贈与を 遺留分算定に含める「相続開始前10年」、 もう一つは遺留分侵害額請求権についての 「相続開始から10年」です。 意味が異なります。
遺留分侵害額請求は自動的に発生する?
遺留分が侵害されていても、 自動的に金銭が支払われるわけではありません。
遺留分権利者が、 受遺者や受贈者に対して 遺留分に関する権利を行使する 意思表示をする必要があります。
期限が問題になる可能性がある場合には、 内容証明郵便など、 意思表示をしたことを確認できる方法が 利用されることがあります。
行政書士は、 紛争当事者の代理人として 遺留分侵害額請求の交渉を行うことはできません。
生前贈与をすれば相続対策になる?
生前贈与は、 財産を生前に承継する方法の一つです。
しかし、 「遺留分を避けるために 生前贈与をすればよい」 と単純に考えるのは適切ではありません。
生前贈与を検討する際には、 例えば次の点を確認します。
- 誰に財産を渡したいのか
- 他の相続人の遺留分を侵害しないか
- 贈与後の自分の生活資金は十分か
- 不動産を贈与する場合の名義変更
- 贈与税など税務上の問題
- 将来の相続税との関係
- 遺言との整合性
贈与税・相続税など 税務上の判断については、 税理士へ確認する必要があります。
遺言を作る場合も遺留分に注意
遺留分の問題は、 生前贈与だけではありません。
例えば、
- 長男に全財産を相続させる
- 相続人ではない人に全財産を遺贈する
- 特定の子だけに不動産と預貯金の大部分を相続させる
といった遺言を作成すると、 他の遺留分権利者の遺留分を 侵害する可能性があります。
ただし、 相続開始後に遺留分侵害額請求を 受ける可能性があります。
そのため、 遺言を作成する際には 「誰に何を渡すか」だけでなく、 遺留分まで確認して 内容を設計することが重要です。
公正証書遺言の作成手順・必要書類・証人について詳しく見る →
生前贈与と遺留分でよくある質問
Q. 生前贈与した財産はすべて遺留分の対象になりますか?
Q. 子どもへの生前贈与は10年以内なら全部対象ですか?
Q. 孫への生前贈与は1年ですか?
Q. 兄弟姉妹にも遺留分がありますか?
Q. 遺留分を侵害する遺言は無効ですか?
Q. 遺留分を侵害されたら贈与された不動産を返してもらえますか?
Q. 遺留分侵害額請求はいつまでできますか?
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まとめ|生前贈与は遺留分まで考えて行う
生前贈与をしたからといって、 その財産が必ず遺留分と 無関係になるわけではありません。
特に、 相続人に対する一定の生前贈与については 相続開始前10年間、 相続人以外への贈与については 原則として相続開始前1年間という基準があります。
また、 遺留分を侵害した場合には、 相続開始後に 遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを 請求される可能性があります。
生前贈与や遺言を検討する場合には、 単に「誰に財産を渡したいか」だけでなく、 相続人・財産額・遺留分・税金・将来の生活資金 まで含めて考えることが重要です。
また、 生前贈与を行った後も財産が残る場合には、 その財産を誰に承継させるのかについて 遺言書を作成しておくことも検討する必要があります。
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