認知症になる前にできる生前対策|遺言・任意後見・財産管理・死後事務を解説

認知症への備えは、介護や医療だけではありません。 財産管理や契約、将来の相続についても 元気なうちから考えておくことが重要です。

判断能力が低下すると、 預貯金や不動産の管理、 施設への入居契約など、 自分自身で法律行為を行うことが 難しくなる場合があります。

また、遺言書や任意後見契約など、 本人に判断能力があるうちに 準備することが重要な制度 もあります。

この記事では、 認知症になる前に検討しておきたい 遺言・任意後見・財産管理・死後事務 などの生前対策について行政書士が解説します。

認知症になる前の「生前対策」とは

生前対策とは、 自分自身が元気で判断能力が十分にあるうちに、 将来の財産管理や生活、相続、 亡くなった後のことについて 準備しておくことです。

具体的な方法は、 本人の家族構成、財産状況、 将来どのような生活を希望するかによって異なります。

遺言書 自分が亡くなった後、 誰にどの財産を承継してほしいのかを あらかじめ決めておきます。
任意後見契約 将来判断能力が低下した場合に備えて、 誰にどのような支援をしてもらうかを 元気なうちに契約しておきます。
財産管理等委任契約 判断能力がある段階から、 必要な財産管理などを 信頼できる人に依頼する方法です。
死後事務委任契約 葬儀・納骨・契約の解約など、 自分が亡くなった後に必要となる事務を あらかじめ依頼しておく方法です。
認知症になる前に、何を準備すればよいか分からない方へ

遺言・任意後見・財産管理・死後事務など、 必要な対策は家族構成や財産状況によって異なります。 「自分には何が必要なのか」という段階からご相談いただけます。

なぜ認知症になる前の準備が重要なのか

認知症になったからといって、 直ちにすべての契約ができなくなるわけではありません。

重要なのは、 その時点で契約内容を理解し、 適切に判断できる能力があるか という点です。

判断能力が大きく低下してからでは、 本人が希望する内容で契約を締結したり、 遺言書を作成したりすることが 難しくなる可能性があります。

「認知症になってから考える」のではなく、 自分自身で判断できるうちに 将来の希望を整理しておくことが重要です。

1.遺言書を作成する

遺言書は、 自分が亡くなった後の財産の承継について 意思を残すための制度です。

例えば、

  • 自宅を配偶者に相続させたい
  • 預貯金を子どもに相続させたい
  • 相続人ではない人に財産を残したい
  • 遺言執行者を指定しておきたい

といった希望を 遺言として残すことができます。

遺言をするためには、 遺言時にその内容や結果を理解できる 遺言能力 が必要です。

認知症の診断だけで遺言の可否が決まるわけではありません。
認知症の診断を受けていることだけで 直ちに遺言ができなくなるわけではありませんが、 判断能力の状態によっては、 後から遺言の有効性が問題になる可能性があります。

2.任意後見契約で将来に備える

将来の認知症に備える制度として 重要なのが 任意後見制度 です。

任意後見契約では、 本人に十分な判断能力があるうちに、 将来自分の判断能力が低下した場合に 支援してもらう人と支援内容を あらかじめ決めておきます。

任意後見契約は 公正証書によって締結する必要があります。

ただし、 契約を締結しただけで 直ちに任意後見人としての権限が 発生するわけではありません。

その後、 本人の判断能力が不十分な状態となり、 家庭裁判所によって 任意後見監督人 が選任されると、 任意後見契約の効力が生じます。

任意後見の基本的な流れ

判断能力が十分なうちに任意後見契約

将来、判断能力が低下

家庭裁判所へ任意後見監督人の選任申立て

任意後見監督人を選任

任意後見契約の効力が発生

3.法定後見と任意後見は違う

成年後見制度には、 大きく分けて 法定後見制度任意後見制度 があります。

任意後見 判断能力が十分なうちに、 将来支援してもらう人や支援内容を 本人自身が契約によって決めておく制度です。
法定後見 すでに判断能力が不十分になった場合に、 家庭裁判所へ申立てを行い、 家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。
大きな違いは「いつ準備するか」です。
自分で将来の支援者や支援内容を決めておきたい場合には、 判断能力が十分なうちに 任意後見契約を検討する必要があります。

4.判断能力があるうちから財産管理を任せたい場合

任意後見は、 本人の判断能力が低下し、 任意後見監督人が選任されてから 効力が生じます。

そのため、 「まだ判断能力はあるけれど、 高齢になって銀行や役所へ行くのが大変になってきた」 といった段階から支援を希望する場合には、 別途、 財産管理等委任契約 を検討することがあります。

本人の状況に応じて、 現在の支援と将来の任意後見を 組み合わせて準備する方法も考えられます。

5.家族信託という選択肢

財産管理の方法として、 民事信託(いわゆる家族信託) が利用されることもあります。

信頼できる家族などに一定の財産を託し、 あらかじめ決めた目的に従って 管理・処分してもらう仕組みです。

ただし、家族信託は 成年後見制度や遺言の代わりになる 万能な制度ではありません。

財産の種類や家族構成によって 適している制度は異なるため、 他の制度との役割分担を考える必要があります。

6.生前贈与を検討する場合

元気なうちに、 子どもや孫などへ財産を贈与する 生前贈与 という方法もあります。

ただし、 「生前贈与をすれば必ず相続税対策になる」 とは限りません。

贈与税や相続税、 将来必要となる本人自身の生活費・介護費なども 考えたうえで判断する必要があります。

税務については税理士への確認が必要です。
贈与税・相続税など 税務上の判断が必要な場合には、 税理士への確認が必要です。

7.亡くなった後のことも準備する

生前対策では、 認知症になった後のことだけでなく、 亡くなった後に誰が手続きを行うのか についても考えておくことが重要です。

亡くなった後には、 状況に応じてさまざまな事務が発生します。

  • 葬儀・火葬に関する手続き
  • 納骨・供養に関する手続き
  • 病院・施設の精算
  • 住居・施設の退去
  • 電気・ガス・通信契約などの解約
  • 家財の整理
  • 関係者への連絡

家族や頼れる親族がいない場合などには、 死後事務委任契約 によって、 必要な手続きをあらかじめ依頼しておく方法があります。

遺言・任意後見・死後事務をまとめて準備することもできます

「認知症への備えだけでよいのか」 「遺言も作っておいた方がよいのか」 「亡くなった後を頼める人がいない」 といった場合には、必要な制度を一緒に整理します。

遺言・任意後見・財産管理・死後事務は役割が違う

生前対策を考える際には、 1つの制度ですべてに対応しようとするのではなく、 それぞれの役割を理解することが重要です。

遺言書 主に亡くなった後の 財産の承継について意思を残します。
任意後見契約 判断能力が低下した後の 財産管理や生活に関する法律行為に備えます。
財産管理等委任契約 判断能力がある段階から、 必要な財産管理などを依頼するために利用します。
死後事務委任契約 葬儀・納骨・契約解約など、 本人が亡くなった後の事務を依頼します。

どの制度を選べばいい?

必要な生前対策は、 全員同じではありません。

財産の相続先を決めたい 遺言書を中心に検討します。
認知症になった後が心配 任意後見契約を中心に検討します。
今から財産管理を手伝ってほしい 財産管理等委任契約について検討します。
亡くなった後を任せる人がいない 死後事務委任契約について検討します。

実際には、 一つだけを選択するのではなく、 本人の状況や希望に応じて 複数の制度を組み合わせることもあります。

元気なうちに整理しておきたいこと

具体的な契約をする前に、 まず自分自身の状況と希望を整理しておくと、 必要な制度が分かりやすくなります。

  • 将来、誰に財産管理を任せたいか
  • 認知症になった場合、誰に支援してほしいか
  • どこで生活したいか
  • 預貯金・不動産など、どのような財産があるか
  • 亡くなった後、誰に財産を残したいか
  • 葬儀や納骨について希望があるか
  • 亡くなった後の手続きを頼める人がいるか
生前対策の目的は、 制度をたくさん契約することではありません。
自分が将来どのように生活したいのか、 何を誰に任せたいのかを整理し、 必要な制度だけを選択することが重要です。

認知症・終活・遺言について詳しく知りたい方へ

すでに判断能力が低下している方へ

このページは、 本人に十分な判断能力があるうちに行う 生前対策を中心に解説しています。

すでに認知症などによって判断能力が低下し、 預貯金の管理、施設入所、不動産、 相続手続きなどで法律上の支援が必要な場合には、 法定後見制度を検討することがあります。

まとめ|認知症対策は元気なうちから考える

認知症への備えでは、 医療や介護だけでなく、 財産管理や契約、相続についても 考えておくことが重要です。

特に任意後見契約などは、 本人に十分な判断能力があるうちに 準備する必要があります。

また、 遺言書・任意後見契約・財産管理等委任契約・ 死後事務委任契約には、 それぞれ異なる役割があります。

「現在」 「認知症などで判断能力が低下した後」 「亡くなった後」 の3つに分けて考えながら、 自分に必要な生前対策を整理することが大切です。

札幌で認知症になる前の生前対策をご検討の方へ

行政書士トリキ法務事務所では、 ご本人の希望や家族関係、 財産状況を確認しながら、 公正証書遺言・任意後見・財産管理等委任・ 死後事務委任など、 将来に向けた準備を整理します。

「認知症になる前に何をしておけばいいのか」
「遺言と任意後見の両方が必要なのか」
「今から財産管理をお願いしたい」
「亡くなった後の手続きまで準備しておきたい」

このような段階からご相談いただけます。

遺言・任意後見・死後事務などの 相談内容については 札幌の終活相談ページ もご確認ください。