成年後見制度の活用

成年後見制度

成年後見制度は、高齢や障害などの理由により判断能力が低下した人を保護するための制度です。生活や財産管理を支援してもらくことができます。
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の二種類があります。

1.法定後見制度

法定後見制度は、判断能力が低下してしまった後に、家庭裁判所の判断で本人の財産管理、身上監護をする後見人が選任される制度です。この制度には三つの類型があります。

  • 後見
    判断能力が著しく不十分な場合に適用されます。
  • 保佐
    判断能力が全くない場合に適用されます。
  • 補助
    判断能力が不十分な場合に適用されます。
2.任意後見制度

任意後見制度は、本人がまだ判断能力がある段階で、将来判断能力が低下してきたときのために、あらかじめ信頼できる人を任意後見人として指定しておく制度です。任意後見制度を開始するためには、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任の申立てを行う必要があります。

制度の利用手順
  1. 申立て
    法定後見の場合は、本人・配偶者・四親等以内の親族・検察官・市町村長が家庭裁判所に申立てを行います。任意後見の場合は公正証書での契約を行います。
  2. 審理・決定
    家庭裁判所が申立てを受け、審理を行い、後見人・保佐人・補助人を選任します。任意後見の場合は家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行います。
  3. 後見開始
    選任された後見人が、本人の財産管理や身上監護を開始します。

成年後見制度は、本人の権利保護と自立支援を目的としており、本人の意思や利益を最大限尊重することが求められます。また、後見人には厳格な義務と責任が課されており、家庭裁判所の監督のもとで適切に後見業務を行う必要があります。

成年後見制度の実際の活用方法

成年後見制度の実際の活用方法は、主に以下になります。

事例1.高齢者の生活支援

認知症高齢者の支援

  • 認知症を患っている高齢者が、自分の財産管理や生活のための手続きができなくなった場合、後見人がその役割を担います。
活用方法
  • 財産管理
    預金の引き出しや管理、不動産の売却、年金の受給手続きなど。
  • 生活支援
    介護サービスの契約、施設入所の手続き、日常生活費の管理など。
事例2.障害者の支援

知的障害者の支援

  • 知的障害を持つ人が、日常の契約行為や財産管理が難しい場合に、後見人が支援します。
活用方法
  • 契約行為の補助
    住宅の賃貸契約、医療サービスの契約、教育支援サービスの利用契約など。
  • 財産管理
    預金通帳の管理、支払い手続き、必要な支援金の管理など。
事例3.精神障害者の支援

精神障害を持つ人の支援

  • 精神疾患により判断能力が一時的に低下する場合、後見人が必要な支援をします。
活用方法
  • 治療契約の代行
    医療機関との契約、入院手続き、治療費の管理など。
  • 日常生活の支援
    住居の確保、生活費の管理、社会復帰支援など。
事例4.任意後見制度の活用

将来に備えるための準備

  • 健康なうちに将来の自分のために信頼できる人を任意後見人として指定する契約を結んでおく。
実際の活用のポイント
  • 適切な後見人の選任
    本人の意思や生活状況を理解し、信頼できる人を選ぶことがとても重要です。専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士など)を後見人にすることもできます。
  • 後見人の役割と責任
    後見人には法的な義務と責任があり、本人の利益を最優先に考えて行動する必要があります。また、家庭裁判所に定期的に報告書を提出し、監督を受けます。
  • 本人の意思の尊重
    成年後見制度は、本人の意思や権利を最大限に尊重することを基本理念としています。後見人は可能な限り本人の意思を確認し、意思決定を支援します。

成年後見制度の利用は、本人や家族の生活を安定させ、安心して過ごせる環境を整えるために重要です。また、相続や遺産分割協議の際にも必要な制度です。具体的な活用事例や手続きについては、地域の家庭裁判所や専門家にご相談ください。

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